軽ストロングHEV化への突破口か ロッキーに見るダイハツの選択

 まずは、この数値を見てもらいたい。(1)85kW、280N・m、(2)80kW、253N・m、(3)78kW、170N・m、(4)59kW、141N・m。実はこれは、代表的な小型のストロングHEVに搭載されている駆動モーターの最高出力と最大トルクである。

軽ストロングHEV化への突破口か ロッキーに見るダイハツの選択

 すなわち、(1)が日産自動車「ノート」、(2)がホンダ「フィット」、(3)がダイハツ工業「ロッキー」、(4)がトヨタ自動車「ヤリス」――のものだ(図1)。ハイブリッド方式は、(1)~(3)がシリーズ方式、(4)がシリーズパラレル方式である。

図1 ダイハツの新型SUV(多目的スポーツ車)「ロッキー」ダイハツは小型SUVのロッキーの新型車において、同社初のストロングHEVモデルを設定した。ハイブリッドシステムは同社が独自に開発したシリーズ方式のものだが、トヨタ自動車の部品や要素技術を流用している。(撮影:日経クロステック)[画像のクリックで拡大表示]

 ここで注目してほしいのは、最高出力に対する最大トルクの比率(単位はN・m/kW)だ。(1)3.29、(2)3.16、(3)2.18、(4)2.39――という計算になる。基本的にエンジンは発電専用で走行はモーターだけで賄うシリーズ方式の場合、モーターのトルクは最高出力に対して3倍超となっている

* ただし、フィットはシリーズ方式でありながら、高速域ではエンジンを車軸に直結して走る仕組みになっている。

 ところが、ダイハツのロッキーは、シリーズ方式でありながら、同比率は2.18とシリーズパラレル方式に近い(図2)。筆者は、このアプローチこそ、ダイハツが見据える軽自動車のストロングHEV化の突破口なのだとみている。

図2 ロッキーのHEVモデルのパワートレーンエンジン、ギアボックス、モーター、発電機、パワー・コントロール・ユニットから成る。(撮影:日経クロステック)[画像のクリックで拡大表示]

 というのも、モーターの大きさは、最高出力ではなく最大トルクで決まるからだ。トヨタ自動車のシリーズパラレル方式ではエンジンの動力も駆動に使える。そのため、モーターの最大トルクを抑えてモーターの小型化を図りつつ、昇圧によってモーターに印加する電圧を電池の総電圧よりも高めることで必要な最高出力を確保することが可能だ。