Oculus Quest 2をPCに無線で繋ぐためのガイド & おすすめVRゲーム

今もっとも注目を集めるVRヘッドセットOculus Quest 2がシステムソフトウェアの更新(Ver.28)によってPCと無線接続できる機能「AirLink」がリリースされた。これにより、今まで煩わしかった有線接続を用いることなく手軽かつ快適にPC VRが楽しめるようになった。

これまでも非公式な手段として「Virtual Desktop」を使えばPCと無線接続できたが、公式の手段で無線接続できるようになるのは多くのユーザーにとって嬉しいことこのうえない。この記事ではOculus Quest 2をPCと無線接続するための簡単なガイドと筆者のおすすめPC VRゲームをセットで紹介しよう。

Oculus Quest 2をPCで無線に繋ぐために必要なものは?

AirLinkを使うには「ゲーミングPC」「Wi-Fiルーター(5GHz対応)」「Oculus Quest 2」の三つのアイテムが必要だ。既に三つとも揃えている人は次の項目まで読み飛ばしても問題ないが、気になる場合は読んで確認してほしい。

ゲーミングPC

当然ながらPC VRにはゲーミングPCが必要だ。すでに自前のゲーミングPCでVRをしている場合は問題ないが、今からPCを揃える場合はPCの専門店で店員に尋ねるかゲーミングPC専門ブログなどを参考にBTO(パーツ指定の注文)で買うのが安全だろう。残念ながら2021年は世界的な半導体供給不足によってGPUの値段が暴騰しているので、PCを自作するのは「時期が悪い」のでオススメしない。

ゲーミングPCを買う場合はGPUの種類を目安にして選ぼう。GPUのメーカーはAMDとNVIDIAのどちらかから選ぶことになるが、ゲーミングPCに慣れないうちはNVIDIAのGeForce RTXシリーズが安全だ。PC VRに使うGPUはRTX3060の性能で不便はしないが、Oculus Quest 2の高解像度で高画質かつ高フレームレートを求めるのであればRTX3070以上が望ましい。CPUのメーカーは特にこだわりがなければIntelとAMDのどちらでも問題ない。2021年4月時点ではRTX 3060搭載PCが16万円、RTX 3070搭載PCがおおよそ20万円が相場となっている。

どうしてもデスクトップPCが好ましくない場合はゲーミングノートPCという手もなくはないが、デスクトップと比べるとGPUの性能が下がることに加え、GPUの端子の種類と数が少ない点に気を付けてほしい。

Amazon.co.jp:OMEN by HP 25L Desktop(インテル Core i7 NVIDIA® GeForce RTX™ 3060 Ti)

Wi-Fiルーター

Oculus Quest 2とPCを無線で繋ぐには5GHz帯に対応したWi-Fiルーターが必要となる。まずはご家庭のルーターの型番をネットで検索して、Wi-Fiのどの規格に対応しているかを調べよう。Wi-Fi 5対応ルーターの場合はそのままでも問題ないが、それ以前の規格のWi-Fiルーターから買い替える場合はWi-Fi 6対応のものを買うことをオススメする。

筆者はヨドバシカメラでIO-DATAの「WN-DAX1800GRW-Y」を9000円ほどで購入した。Wi-Fi 6対応のルーターは相場が7000円から10000円の間であり、おおむねそれらを購入すれば問題ないだろう(数万円のゲーミングWi-Fiルーターを購入する必要はない)。

Amazon.co.jp:ASUSTek WiFi 無線 ルーター WiFi6

なお、PCはWi-FiルーターにLANケーブルで有線接続する必要があるので、PCとWi-Fiルーターを同じ場所にセットして、PCの周囲にVRゲームが満足にできるための空間を確保しよう。プレイ範囲はルーターから6メートル以内が推奨されており、それ以上の距離はサポートされない。

Oculus Quest 2

Amazon.co.jp: Oculus Quest 2 64GB

Oculus Quest 2はネット通販だけでなく日本の各家電量販店でも購入可能である。本体価格はストレージの容量ごとに異なり、64GBモデルが3万7100円、128GBモデルが4万9200円となっている。利用用途がPC VRとOculus Quest 2で半々ぐらいの予定であれば64GBモデル、Quest 2本体にゲームや動画ファイルをたくさん入れたい人は128GBモデルがオススメ。

なお、予算に余裕のある人は『Quest 2 Eliteストラップ バッテリーおよび携帯ケース付き』を買うと「追加バッテリー」、「頭の重心が安定するヘッドストラップ」、「Oculus Quest 2を持ち運びできる専用ケース」の3点を入手できてVRの体験品質がとても向上する。

また、カスタマイズに凝る人はOculus Quest 2をPCに接続するUSB-Cケーブルを購入するのもアリ。AirLinkが使えない環境でPC VRを有線接続で楽しむだけでなく、外部ツールを使ってMODを導入したり動画ファイルを出し入れする際には有線接続が手っ取り早い。Oculusが公式で販売するUSB-Cケーブルは税込1万700円という価格で多くのユーザーをおののかせたが、Oculus公式から指定されている市販USB-Cケーブル(3.0m)はおおよそ1200円で購入可能だ。ちなみに、筆者はどちらも買った。

Amazon.co.jp: Oculus Linkケーブル

Amazon.co.jp:Anker USB Type C ケーブル PowerLine USB-C & USB-A 3.0 ケーブル

具体的な手順

PC側では、PC側のOculusランチャーでOculusアプリバージョンが28にアップデートされていることを確認しよう。

バージョン28の場合は設定のベータ欄にAir Linkの項目が追加されているので有効化する。

Oculus Quest 2はゴールデンウィーク中にはほとんどのユーザーがシステムソフトウェアがバージョン28にアップデートされていることだろう。設定の基本データ欄でバージョンを確認したらテスト機能の欄にアクセスしてAirLinkを有効化すれば、クイックアクセスの欄でAirLinkが表示されているはずだ。

OculusAppを起動したPCとの接続を確認したらそのままPC VRを起動できるし、Oculus VRだけでなくSteam VRもプレイ可能なので存分に楽しもう。

Oculus Quest 2でプレイしたいオススメのPC VR対応コンテンツ

いきなり正直にいうと、近年のトレンドは大抵の人気VRゲームがOculus Quest 2に移植されたり、最初からPC VRとOculus Questの同発マルチとして発売されるようになっている。そのため、Oculus Quest 2でプレイしたいPC VRゲームは「ゲームの要求性能が重量級すぎて移植できない」「PC版のMODが人気」、「Facebookのポリシーに沿わないジャンル」、「非公式のMODでのみVRに対応している」の4つのタイプに分けられる。以上の4つに当てはまる筆者のオススメVRゲームを紹介しよう。

Oculus Quest 2をPCに無線で繋ぐためのガイド & おすすめVRゲーム

『Half-Life: Alyx』は重量級VRゲームのド定番。IGN本家でレビュースコア10点満点を獲得し、IGN JAPANでもIGN JAPAN GOTY 2020で4位、部門賞でベストビジュアル賞とイノベイディブ賞を獲得した高評価なVRアクションアドベンチャーだ。

Steamを運営するValveが開発していたFPSの金字塔『Half-Life』シリーズの最新作かつVR専用ゲームであり、本作のプレイ前に『Half-Life 2』『Half-Life 2: Episode One』『Half-Life 2: Episode Two』の三本をプレイしておくとストーリーを深く楽しめるが、シリーズの知識がなくても本作独自の緊張感の高いサバイバルシューターは存分に楽しめるはずだ。

「今もっともプレイすべき価値のある高品質なVRゲームはなんですか?」と聞かれたなら筆者は間違いなく『Half-Life: Alyx』をオススメする。本作の品質を超えるVRゲームはあと3年は出てこないだろう。

2020年に発売された『Microsoft Flight Simulator』(以下、MSFS)は『Cyberpunk 2077』と並んでもっとも処理負荷が高いPCゲームの一つだ。普段ゲームをしない人や航空系の本職の方々がMSFSのために数十万円をかけてPCを買い替えたりフライトシミュレーター専用の周辺機器を買い揃える、ともっぱらの噂である。そんなMSFSも2020年版でついにVRに対応し、飛行機のコックピット視点や三人称視点でBingマップのデータが反映された大空からの光景を楽しむことができる。

なお、MSFSのVRモードの推奨GPUはRTX 2080Ti(RTX3070相当)で、最高画質かつ高解像度だとRTX3070でも平均30FPSという前代未聞の超重量級VRゲームだ(一般的にVRのフレームレート数は90が望ましい)。とはいえ、解像度や画質、フレームレート数をある程度妥協すればミドルレンジ級のスペックでもそれなりに動作する。

MSFSはSteamで購入するか、Xbox Game Pass UltimateもしくはXobx Game Pass for PCに加入していれば無料プレイできるので、ゲームパス加入者はぜひチェックしてみよう。

ベセスダのオープンワールドRPGといえばMODという側面があり、それはVR化したSkyrimでも同様だ。本作は2016年に発売されたスカイリムのリマスター版『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition(Skyrim SE)』をベースに作られており、MODをつかえば『Skyrim SE』のデータをそのまま移植したりSE版のMODをVRにも適応できる。また、元のゲームが2011年のものということもあって負荷が低いのでPCのスペックが控え目でも快適にプレイできるのも嬉しいところ。

ちなみに、ベセスダの親会社であるゼニマックスグループは2016年から2018年までOculusと特許を巡って裁判をしていた(ゼニマックスが勝訴した)ので、ベセスダ系のVRゲームがOculusプラットフォームで公式に販売されたことはない。

VRゲームに触れたことがない人でも一度はプレイ動画を見たことがあるであろう、売り上げ本数が400万本を越える最も売れたVRゲームが『Beat Saber』だ。ライトセーバーでブロックを叩ききる音ゲーのシンプルさが多くのプレイヤーの心をつかみ、プレイする姿もカッコイイことから多くのプレイ動画が作成された。

なお、『Beat Saber』はOculus Quest版も存在するが、MOD対応で幅広いゲームプレイを楽しみたい場合はPC版がオススメだ。MODが人気のゲームはどうしても権利関係が黒よりのグレーになってしまう面があるため、楽曲データの著作権に違反しない範囲で楽しもう。

日本でもっとも知名度の高い人気のあるVRサービスは明らかに『VRChat』だろう。本作はVR専用ソフトではないが、2017年の運営開始から4年近い歳月を経て日本ユーザー独自のクリエイティビティの高いコミュニティとエコシステムが形成されたソーシャルVRアプリケーションだ。テレビ番組などでVRとして扱われる話題の半分以上はVRChatの話題ではないだろうか。

『VRChat』はOculus Quest版が存在するのでPCがなくともVRでプレイできるが、性能差の限界でOculus Quest版で楽しめるコンテンツの種類は限られてしまう。そのため、クリエイトやコミュニケーションを楽しみたいコアユーザーはPC版のプレイを推奨したい。

なお、余談ではあるもののコアなVRChatユーザーはOculusのVRデバイスよりもHTC社のVRデバイスを使う傾向にある。VRChatのヘビーユーザーは機材への高額な投資を惜しまないため、機材の値段が高くても拡張性に優れるHTC社のデバイスを使うのではないかと筆者は推測している。

Facebookとしては過度にセクシャルな表現のあるVRゲームはあまり販売したくない方針のようなので、そういったジャンルのVRゲームを楽しみたい場合はPC VRが必要となる。この手のジャンルで一番有名なのはアダルトゲームの「VRカノジョ」などがある。筆者としては「ぎゃるがん」シリーズがオススメだ。

筆者はゲームパッドでプレイするレールシューターがとても苦手だが、これがVRゲームに変換されるととても自然なVRシューターになるのだ。なお、ぎゃるがんシリーズのうちVRに対応しているのは「ぎゃるがんVR(だぶるぴーすのアレンジ版)」と「ぎゃるがん2(別途VR対応DLC購入が必須)」のみであることに注意してほしい。

また、DLSiteやitch.ioなどSteam以外のゲーム販売サイトでのみ配信されているVRゲームも少なからずあるが、読者の方に調べていただければと思う。

ホラーゲームはVRゲームの鉄板ジャンルの一つであり、VR対応がPS VR独占だったバイオハザード7がVRゲームの金字塔になっている。同様に、ホラーゲームの金字塔の一つである『Alien: Isolation』もVR化MODが人気だ。

『Alien: Isolation』のPC版はSteamだと日本国内向けに販売されていないのだが、Epic Games Storeで購入できる。Epic Games Storeで何度か無料配信されていたので、すでにライブラリに入っている方も少なくないだろう。なお、VRに対応してはいないものの2021年4月時点ではXbox Game PassでもPC版がプレイ可能だ。

2019年に発売されたものの日本では2020年に話題となった『Outer Wilds』は、なんとVR化MODが存在する。操作方法もVRのモーションコントローラに最適化されており、無重力の独特な慣性がやや酔いを誘発しやすい点以外は完璧なVR体験だ。「人生で一度は超新星爆発に巻き込まれたい」という願望を叶えたい方にはぜひ体験していただきたい。ちなみに筆者のPCはVR化Outer Wildsのプレイ中にPCの電源が落ちたので、2016年に買ったゲーミングPCをいい加減そろそろ買い替えようと決意を固めた。

AirLinkでトラブルに遭遇したときは

最後に、AirLinkでトラブルが生じた場合を想定したQ&Aを用意した。AirLinkに関して不具合が起きた際は参考にして欲しい。

Q1. 手持ちのOculus QuestがアップデートしてもAirLinkに対応しませんA1. AirLinkに対応するのはOculus Quest 2のみでOculus Questは対象外となります

今はOculus Questが2019年5月にリリースされてからまだ2年が経過するかどうかという時期ですが、残念ながらOculusのサポートはQuest 2に全面的に移行しつつあります。初代Oculus Questで無線でPC VRをプレイしたい場合はサードパーティー製の無線接続アプリ『Virtual Desktop』を購入しましょう。

なお、VRヘッドセットの色が黒ければ初代Oculus Quest、VRヘッドセットの色が白ければOculus Quest 2だと見分けることができます。

Q2. Oculus Quest 2をインターネット回線につなげるのが面倒で煩わしいですA2. スマートフォンのOculusのアプリからWi-Fiルーターを登録できます

Oculusのスマートフォンアプリに手持ちのOculus Quest 2を登録させ、アプリからWi-Fi接続の設定できる。2.4GHzの回線は2G、5GHzの回線は5Gと名前が振り分けられていることが多いので、5Gと書いてあるWi-Fi回線を登録する必要がある。筆者だってVRヘッドセットを被りながらWi-Fiを登録するのは面倒だ。

Q3. PCへの負荷が高すぎるのを何とかしたいA3. 解像度とフレームレート数をカスタマイズして下げくてださい

Oculus Linkを使用している際にPC側のOculusのランチャーからフレームレート数と画質を設定できます。初期設定ではフレームレート数が72Hzに設定されていますが、フレームレート数は90Hzや120Hzに設定を変えることで快適になります。当然、PCの負荷も増加します。

Steam VRはPCのスペックに合わせて自動的に解像度を調整するが、なにせOculus Quest 2は解像度がかなり高い機種なので負荷も高い。解像度を下げると映像のジャギジャギ感も表れやすくなるものの、そこは各自のPCスペックを鑑みて調整すること。VRゲーム側でもグラフィックス設定を調整できるので、困ったらとにかく画質を下げることを念頭に置いてほしい。

Q4. 映像の遅延や画質がひどいのですが?A4. Wi-FiルーターとPCをLANケーブルで接続しているかどうか、Wi-Fiルーターの種類、Oculus Quest 2とルーターの距離を確認してください

先述の通り、AirLinkが正常に動作する環境は明確に定められている。Wi-Fiルーターが5GHz帯に対応している規格のものかどうか、Wi-FiルーターをPCとLANケーブルで接続しているか、Wi-Fiルーターから6メートル以内でPC VRをプレイしているかを確認してほしい。5GHzに対応しているルーターでも間違えて2.4GHzの回線に接続しているケースも考えられる。

Oculus Quest 2はバイオハザード4VRを始めとした様々な独占コンテンツや人気VRゲームの移植が多数登場予定のVR初心者にもっともオススメなVRデバイスだが、当然ながらハードウェアの性能の限界でOculus Quest 2で楽しめないコンテンツも存在する。そういうときは、少し値段は張るもののゲーミングPCに手を伸ばしてPC VRの世界を覗いてみてほしい。きっと、あなたが思った以上にこの世界は広大なはずだ。


※Amazonへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、Amazonでの販売やプライム会員の成約などからの収益化を行っています。