ファミコン時代から未来のゲーム音楽まで語る! 野田クリスタルさんと桜井政博さん初対談企画、Spotifyゲーム音楽対談・場外戦【後編】

 Spotifyは、3億8100万人以上が利用する世界最大級のオーディオ・ストリーミングサービス。7000万曲以上の楽曲や230万以上のポッドキャストを楽しむことができ、数多くのゲーム関連音楽やトークも配信されている。

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 また、2021年12月10日には、ファミ通とコラボしたゲーム音楽対談企画“ファミ通ゲーム音楽室”の前編が、そして12月13日にはその後編が、SpotifyのMusic + Talkで特別配信。ゲーム好きとして知られるお笑いコンビ・マヂカルラブリーの野田クリスタルさんと、ゲームクリエイターの桜井政博さんをお招きし、ゲーム音楽をテーマに語り合ってもらった。

 このMusic + Talkでは、“ゲーム音楽”についてふたりのトークをたっぷりと聞くことができる。そこで本記事では、その場外戦という形で、Music + Talkに収まりきらなかった、ふたりの濃密なゲームトークを2回に分けて掲載。

 後編では、ファミコン ディスクシステムのゲーム音楽からトークが始まり、最終的に未来のゲーム音楽のことにまで話題がおよんだ。前編同様、Music + Talkでは聞けない未公開トークとなっているので、最後までお楽しみに。

 なお、Music + Talkでは、おふたりのオススメのゲーム音楽も聴くことができるので、記事と併せてそちらもぜひチェックしてほしい。

野田クリスタルと桜井政博がゲーム音楽を語る! ファミ通ゲーム音楽室・前編(Music + Talk)野田クリスタルと桜井政博がゲーム音楽を語る! ファミ通ゲーム音楽室・後編(Music + Talk)

※ファミ通ゲーム音楽室のMusic + Talkの視聴には、Spotifyアプリのダウンロードが必要になります。

App StoreでダウンロードGoogle Playでダウンロード

野田クリスタルさん(のだ)

吉本興業所属。お笑いコンビ・マヂカルラブリーのボケを担当。2018年に“キングオブコント”の決勝に進出。2020年に“R-1ぐらんぷり2020”、“M-1グランプリ2020”の王者となる。ゲーム好きとして知られており、ゲーム番組などに多数出演している(文中は野田)。

桜井政博さん(さくらい まさひろ)

有限会社ソラ代表。『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズのディレクター。『星のカービィ』、『メテオス』、『新・光神話 パルテナの鏡』などのディレクターとしても知られる(文中は桜井)。

ファミコンのゲームミュージックならではのよさ

桜井野田さんが生まれた1986年は、ファミコンのディスクシステム(※1)が販売された年なんですが、ディスクシステムでは音源がひとつ増えているんですよね。それでビブラートがしっかりとできるようになったりしています。

※1……ファミリーコンピュータ ディスクシステムのこと。1986年2月21日に任天堂が発売したファミコン用の周辺機器で、専用のディスクメディアに書き込まれたソフトウェアを読み込み、ゲームがプレイできた。

野田ビブラートを再現できるようになるシステムが作られたということですか。

桜井うーん。まあ、内包はしているかな? たとえば、『ゼルダの伝説』(※2)のいちばん最初のメロディーを聞くと、はっきりとわかると思います。あ、これビブラートがかかっていると。

※2……ディスクシステムのローンチタイトルのひとつで、リンクが活躍するアクションアドベンチャー。『ゼルダの伝説』は、任天堂を代表する人気シリーズに成長し、現在も新たなゲームが誕生している。

野田最初の『ゼルダ』ですか?

桜井最初の『ゼルダ』です。ディスクを入れたときの、いちばん最初の音に注目してください。最近出た『ゼルダ』のゲーム&ウオッチを持っていれば、日本語版と英語版に切り替えてみればわかりやすいと思います。海外版はROMなので、ディスクシステムの音源がありません。

ゼルダの伝説 BGM聞き比べ

野田うれしかったろうな、ビブラートを入れられたとき。

桜井そうでしょうね。それまでのゲームも、力業でビブラートを表現できなくはなかったんですけど。そういえば、ファミコンにはさらに音源ハードをROMの中に入れるという会社もけっこう多かったです。

野田会社ごとに音楽の作りかたも違うんですね。それぞれ持っている技術があるってことですよね。

桜井ファミコンほど、共通フォーマットなのにぜんぜん違う音源を持っているハードは、なかったんじゃないかな。いままでもこれからもないだろうし……。時代ですね。

 私はファミコンの当時に生きていたとは言えども、ファミコンの音源をそのまま鑑賞用として聴くっていうのはさすがになかったんですよね。だけど、そういう技巧みたいなところに注目して聴くと、これがまあおもしろいんです。

野田僕はもうシンプルに、ただ曲を聴いてるだけですけど、その曲をどうやって作ったのか、考えらながら聴いているってことですよね。ファミコンのゲーム音楽と言えば、いまでもアレンジされて使われていますよね。それもすごいことだと思いますが。

桜井だから逆に、たとえばファミコン生まれの曲を聴くならば、いまもなお続いているシリーズのものよりも、ファミコンで歴史が終わった作品のほうがおもしろいんですよね。いまに生きているシリーズだったら、まさにいま聴けますし、なんだったら『大乱闘スマッシュブラザーズ』(※3)で、ちゃんとアレンジしていたかもしれないですから。

※3……桜井さんがディレクターを務める対戦アクションゲームの人気シリーズ。マリオやリンク、カービィなど、いろいろな作品からキャラクターが登場するという性質上、BGMは原作のものを編曲しているケースが多い。

野田まさに遺跡発掘ですね。当時は、とんでもない作りかたのゲームミュージックもあったんじゃないですか。

桜井だから、現代に作られるチップチューンなどにはあまり興味が湧かないんですよね。あくまでも当時にあった、ファミコンの曲が好きです。

『大乱闘スマッシュブラザーズ』の開発秘話に野田さんは興味津々!

野田『スマブラ』第1作目のときは、どういう企画の打ち出しかたをしているんですか? 最初からキャラクターがごっちゃになっていて……みたいな感じでした?

桜井もちろん、最初はわりと明快な企画書を書いていますよ。企画書を書いて、プロトタイプみたいなものを制作して、そのプロトタイプを任天堂に持っていくと。プロトタイプのプログラムを作ったのは岩田さん(※4)ですけど。

※4……岩田聡さん。任天堂の元代表取締役社長。ハル研究所代表取締役社長なども歴任し、『星のカービィ』シリーズや『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズなどにも携わっている。

野田それを任天堂に持って行って……。当時からもう、任天堂からは信頼されていますもんね。

桜井どうでしょう? そうでもないと思いますが(苦笑)。

野田企画書を見てないからアレですけど、たぶん『スマブラ』の企画を聞いたら、ワクワクすると思うんですよ。それでも企画はすんなり通らなかったんですか?

桜井通らないってことはぜんぜんないし、もちろんオーケーもいただいてはいるんですけど。自分なりに弱点みたいなものも想定して、企画を考えていたのはたしかですね。

野田弱点? 『スマブラ』の企画の段階で、どんなところが弱点だったんですか?

桜井主役が多いことです。『ゼルダの伝説』ならリンクという主人公がひとりいて、その主人公をもとにいろいろと展開をさせて宣伝効果を出せばいいんですけど、格闘ゲームはオリジナルキャラクターがいきなり8人とかいるわけですよね。しかも全員が主役で。そういう見せかたをすると、ユーザーが混乱するんです。だからコンシューマーのオリジナルでウケた格闘ゲームは、あまりないと思うんですよね。結果として、自分は任天堂のキャラクターを使わせていただくということを選んだということですね。

野田あー、そういう入りなのか。

桜井そういう入りです。だから最初にあったのはルールで、“キャラクターを混ぜる”というのは後で決まったんです。

野田すげえ話だな。僕は逆だと思っていました。企画書として通りやすいのは、任天堂キャラクターのごった煮だと思ったんですよ。

桜井それはむしろ通らないですね……。

野田問題があるとしたら、「特定のキャラクターを使わせてもらえないことはあるだろうな」と思っていたんですけど、むしろゲームシステムから入っているんですね。

桜井一応、端々でお話をしていることではあるんだけど、でも昔の話ですもんね。また、改めてここで話をするのはいいことなのかも。

野田聞きてえええ! 僕、好きなんですよ。ひとつのゲームができあがっていく様を見るのが。映画を観ているようでワクワクするんですよ。

 子どものころって、やっぱり「こんなゲームを作りたい」、「こんなゲームならいいのに」みたいなことを考えるじゃないですか。でも、いざ自分でゲームを作るとなったときに、思わぬところで続々と問題点が出てくるんだなあということを、すごく実感して。

桜井そういうことですね。最初のほうで「ゲームが難しすぎるから、どうやって解決するのか」というのを考えたというエピソードをお話しました(※5)が、難しくなった理由などは、作ってみたらよくわかるんですよね。やっぱりみんな考えていないわけではなくて、理由があってそうしている。

※5……『星のカービィ』のゲームバランスのエピソードとして、前編の対談に収録。

野田それは本当に思います。なんか、ユーザーである僕らごときが「これをやったらいいのにな」とか、「こうすればいいのにな」なんて思うことはハナからやっていて、そのうえでなんらかの問題点がある。もしくはこういう流れになってしまうから、事前にやめておくという判断をしているものがたくさんあるんだなって。だから、さすがゲーム制作者は高みにいるなって思いましたね。

桜井それが必ずしもユーザーに対して向けられているかとか、開発側が本意としてやっているかと言うと、そうではないことも多いんですけどね。

野田そういう事情が入り乱れてるから、わからなくなくなりますよね。

桜井基本的には作る人だけではなくて、売る人とか、会社の中で偉い人とか、そういう立場の異なる人がたくさんいますからね。立場が違えば、言うことも変わるということはあるんですよね。

現代のモノづくりにおいて気をつけなければならないこととは?

野田僕が作った『野田ゲー』には、元ネタがあるゲームもいくつかあるんですけども。それって、そもそも現代の若い子たちにわかるのかな? という疑問があって。

桜井いや、わからなくていいんじゃないですか。

野田ああ、やっぱりそれでいいんですね。最近、我々の世代と若い世代とで、ゲームに関する同じ言葉を伝えても違うものを思い浮かべることが増えてきてるんじゃないかな、と思っていて。

 たとえば、シューティングゲームと言ったときに、僕らはやっぱり横スクロールとか、縦スクロールで機体が進んでいく絵を思い浮かべるんですけれども、若い世代は3Dで銃を撃っていくタイプのゲームを思い浮かべたりすると思うんです。だから『野田ゲー』にはシューティングゲームもありますと言うと、それぞれが違うものを思い浮かべてしまうので、ちょっと難しい時代になってきているんですよね。同じシューティングというジャンルなのに、ぜんぜん違うゲームじゃないですか。

桜井まあ、なんでもそうですけど、すべての層にリーチする必要ってあまりないと思います。

野田『野田ゲー』を作っているチームは、じつは若い人があまりいなくて、おっさんばかりで作っているんです。だから「こんな感じで」と伝えるときの共通言語がだいたいファミコンだったりするんですよ。これは桜井さんの前で言うのは絶対よくないんですけども……。

桜井なんですか(笑)。

野田チームにゲームの説明をするときに「このゲームは『カービィ』の“刹那の見切り”みたいにしたいんだよ」と言っちゃうんです。めっちゃその言葉が飛び交うんですよ。「これは刹那の見切りなんだよ!」って(笑)。

桜井うん、まあわかります。共通言語として、同じ記憶があるんだったらそのひと言で済むから楽は楽なんですよね。

 ただですね、たとえば私の開発チームですと、新卒みたいな人ももちろんいて「子どものときに桜井さんのゲームで遊んでいました」みたいなことを言う人がいたりするんです。20歳くらいの人で。そういう人に対して、「ここは〇〇のようにしたい」ということを、昔のコンテンツで言っちゃうとダメですね。

野田ああ、そっか。伝わらないし、相手に負担をかけるのか。

桜井たとえば、「『ガンダム』のような」と言ってしまうと、それがファースト(※6)なのか最新作のことなのか、世代がぜんぜん違うわけですから同じ意図で共有できないんです。

※6……1979年に放映されたテレビアニメ『機動戦士ガンダム』、および劇場版三部作のことを指す呼称。

野田その場合、どうしているんですか? 

桜井「〇〇のように」という言葉は、なるべく使わないです。

野田なるほど、それを使わずに説明するというのもなかなかたいへんですよねえ……。いま思ったんですけど、『野田ゲー』の現場ではすごく『カービィ』の名前が出てきます(笑)。

桜井そうですか(笑)。恐れ入ります。

野田そう考えると、いまとんでもない人としゃべってるな、と思いました。ただそこはもう、ある意味大きくなりすぎたものですから、『星のカービィ』も。そこは許してください! 「『ドラゴンボール』みたいに」と例えるくらい、伝わりやすい共通言語なんですよ。だからそれはもうしょうがないということで……。

桜井それだけいろいろな方に知っていただけるくらい、ゲームが広がってよかったなと思っています(笑)。

野田そう思っていただけると、助かります!

ファミコン時代から未来のゲーム音楽まで語る! 野田クリスタルさんと桜井政博さん初対談企画、Spotifyゲーム音楽対談・場外戦【後編】

ゲーム音楽が音楽としてゲーム内に実装されたタイミング

野田ゲーム音楽は、どのあたりから「音楽だなあ」と感じるようになったんですかね?

桜井生の音楽をそのままという意味では、日本ではPCエンジン(※7)でCD-ROM2が入ったときとか。1980年代後半ですね。生演奏をそのままCDトラックに入れられたので、『天外魔境』シリーズ(※8)で坂本龍一さんや久石譲さんの曲がそっくり入れられたりしました。

※7……ハドソンと日本電気ホームエレクトロニクス(当時)が共同開発したハード。1987年10月30日に発売され、1988年12月4日にはCD-ROMをゲームソフトとして採用した周辺機器“CD-ROM2(シーディーロムロム)”が登場した。光学ドライブを搭載した家庭用ゲーム機としては、PCエンジンが世界初。

※8……1989年にPCエンジン CD-ROM2でリリースされた『天外魔境 ZIRIA』を始めとするシリーズ。

野田1980年代後半以降ですか。そのときにいまのゲームミュージックの状態になったのか。

桜井「なった」とは言い切れないですけど、少なくとも生演奏みたいなものを入れられることはできたと。

野田そういう話を聞くたびに、意外にやっていますよね。1980年代ですら。

桜井そうそう。そうです。

野田結局のところ、容量がないことがすべて原因だったんじゃないかというぐらい。

桜井まあ、そういうことですね。

野田あのゴーグルもありましたし。VRみたいな(※9)。

※9……1995年7月21日に任天堂が発売した3Dゲーム機“バーチャルボーイ”のこと。

桜井生の曲を入れるという意味では、それよりさらに前に、レーザーディスクのゲーム(※10)みたいなのもあったんですけどね。

※10……テレビゲームのジャンルのひとつ。映像表示にビデオディスクのレーザーディスクを使用している。

野田レーザーディスクゲーム……。何かで見た記憶がありますね。

桜井1980年代の前半、ファミコンが発売されたあたりから少しずつ出てきていまして。たとえば、アニメーションや実写の映像みたいなものが動いて、プレイヤーが方向指示をしたりするというものです。それで、うまくできないとミスしたときの絵に切り替わると。レーザーディスクだから、実写そのものでしたね。

野田そういえば『バイオハザード』(※11)もオープニングが実写でしたからね。

※11……1996年3月22日にカプコンが発売したサバイバルホラーゲーム。オープニングやエンディングに外国人俳優が出演する実写ムービーが使われている。

桜井『バイオ』はプレイステーションだからムービーが使えましたからね。

野田実写を入れるっていう発想は、当時からけっこうあったんですか?

桜井どちらかというと、『バイオハザード』に限って言えばコストダウンかもしれないですけどね。

野田実写のほうが、コストがかからなかった?

桜井当時はCGを作るのに、ものすごくお金かかったんで。たとえば、ちゃんとしたレンダリングマシーンを使ってCGみたいなものを動かすと、本当に驚くほどの時間とお金がかかるので。

野田それはいまでもですか?

桜井いまとは事情が違いますね。いまはどちらかというと、CGとゲームの垣根がなくなりつつありますから。

野田それは思いますよね。「これ、もうCG動かしてんじゃん」という状態。

桜井いや、実際そうですよね。最新作の『コール オブ デューティ』(※12)なども見ているんですけど、どこまで進化するんだろうなという。

※12……アクティビジョンが手掛ける、戦争をテーマにした人気FPSシリーズ。最新作は、2021年11月5日に登場した『コール オブ デューティ ヴァンガード』。

野田これ未来……、実写を動かすこともあるんですかね?

桜井むしろそれは昔にありましたけどね。実写の取り込みを使ってキャラクターを動かすであるとか。

野田あ、『モータルコンバット』(※13)みたいな。

※13……ミッドウェイゲームズが1992年10月8日に海外で発売した、実写取り込みのキャラクターが登場する対戦型格闘ゲーム。

桜井まあ、たとえば。

野田あんな感じになっちゃうのか。あんな感じになっちゃうのかっておかしいですけど(笑)。

桜井実写みたいなものをゲーム内に取り込むというのは、いろいろと試行錯誤がなされていまして。『プリンス・オブ・ペルシャ』(※14)というゲームが、Apple IIという昔のコンピューターでリリースされていたんですけれども、主人公のキャラクターがすごくリアルに動くんですね。人の連続写真をストロボ撮影して、それをドット絵に落とすということをしていて。描画ではなく動きの話になりますが。

※14……1989年10月3日にブローダーバンドが発売したApple II用の固定画面アクションゲーム。

野田やっぱり、昔から実写化の妄想をしていたんですね。当時、僕たちが子どものときも、ゲームがこんなにリアルになっていくんだったら、未来は実写だなって思いましたもん。

桜井ただ、実写は意外と情報量が少ないんですよね。デフォルメが効かないとか。あくまでゲーム画面の中でキャラクターの絵がそのまま写って見えるようなもののことなので、いろいろな演出をしないと、やっぱり勢いは出てこないんですよね。

野田平凡なんですね。ゲームとして見ちゃうと。

桜井そうです。やっぱり実写の物を動かすときに、何か動きに迫力がないなとか思いませんでしたか?

野田ありますね。そう考えると、ゲームのキャラクターは、リアルからかなり味付けされているということですよね。

桜井ええ。たとえば、そうですね、『ストリートファイターII』(※15)と『ストリートファイター ザ・ムービー』(※16)を比べてもらえれば。海外の映画『ストリートファイター』の俳優たちを取り込んで、『ストII』のシステムで遊べる格闘ゲームが昔ありまして。ちゃんとジャン=クロード・ヴァン・ダムがガイルやっていてね。

※15……1991年3月に登場したカプコンが手掛けるアーケードの対戦格闘ゲーム。大ヒットを記録し、数多くのシリーズ作品が登場した。

※16……1995年5月30日に稼働を開始したアーケード用の対戦格闘ゲーム。なお、1995年8月11日に『ストリートファイター リアルバトル オン フィルム』というタイトルがセガサターンで発売されているが、それぞれに別のゲームとなっている。

野田あった気がする!

桜井ゲーム性はだいたい同じなんですけど、やっぱり響きにくい。

野田違いましたね。

桜井だから、デフォルメは不可欠なんです。

野田デフォルメしないと、現実はさほど派手ではないってことですね。

桜井まあ、もちろんすべてを完全現実にする、ということについてはやる価値があるし、たとえばハリウッド俳優みたいなものをそのまま出演させるということも、魅力的なことではあるんですけどね。ただ現実といっしょにすれば、ゲームがおもしろくなるかというと、ぜんぜんそんなことはないという。

野田さんと桜井さんが語り合う未来のゲーム音楽とは?

野田当時のファミコンのゲームミュージックのお話や、作りかたのお話を聞くにつれ、つくづくファミコンのころのゲーム音楽って、すごく記憶に残っているな、と改めて感じました。最近のゲームをプレイしていても、覚えていないことが多いなと感じて。

桜井1本の作品に対する楽曲が、昔に比べて膨大になりましたからね。もちろんそこを工夫しているタイトルもありますが。

野田そんな中、この先ですよね。昔と違って容量はいくらでも使える時代になってきたわけで、ゲーム音楽はどう変わっていくと思いますか?

桜井いやあ、それはもうゲーム企画と完全にマッチしているので、なんとも言えないと思います。ひと言で終わらせるものではないかなと思う。

 たとえば、現在のAAA(トリプルエー)タイトル(※17)みたいなものを作るのだとしたら、現在の延長線上でいくのは間違いないでしょうし。逆にインディー作品やそのほかの比較的規模の小さいタイトルで、音楽がゲーム性に関わるであるとか、密説な関係があるものについては、変わった矛先でやるでしょうし。まちまちだと思いますね。

※17……世界市場での売り上げを見込んで、莫大な開発費を投じて作られたゲームのこと。

野田変わったり変わらなかったりということですか。たとえば、音楽自体の入れかた、使いかたが変わってくることはないんですかね?

桜井もうすでに音ゲーみたいなものが出ていますしね。

野田これ以上、音質がよくなるとかは?

桜井それは普遍的なテーマでもあるかもしれないですけど、音楽のジャンルが今後増えるのか、という話に比較的近いかもしれないです。

野田そうか。そもそもそのレベルの話になってきてしまうわけですね。

桜井それぞれがレールに乗っているわけではないんですよ。いまもしも、ある一定の法則だったり、方針だったりでゲーム業界の音楽が作られているのであれば、それにはちゃんと理由があって、それがふさわしいと思っているからだと思うんです。その中でマンネリを感じて、斬新なものを目指すのはいいけれど、それで奇をてらうようになってもマイナスですし。

野田ユーザー目線にはなっていないということですよね。ファミコンとかのゲーム音楽は覚えているのに、最近のゲームはなかなか音楽を思い出せない現象がある以上、以前と比べてゲーム音楽というものが、重要視されなくなってきている時代がいま来てるという感じですかね?

桜井いや、ゲーム音楽はいまも変わらず重要なんじゃないですかね。ええと、ちょっと話がわかりにくいと思うので、視聴者さんに多少噛み砕くと、ゲームの音楽自体がハリウッド化をしているといいますか、ボリューム自体がものすごく大きくなっていると。それによって曲数が多くなり、長大になり、結果として誰も覚えられない曲になるという、そういうことを指しているわけですよね。

野田そうですね。進化をすればするほど、わかりづらくなってきているなって。やれることが多すぎるからということですよね?

桜井結局、自分もたくさんのゲームをプレイしていますが、その中の曲をひとつひとつ覚えているわけではないんです。そして、それはユーザーの皆さんもだいたい同じじゃないかなとは思っています。

野田昔なら、ゲームタイトルを見たらその曲のテーマは何かしら覚えていて、脳内再生されることが多かったんですけど、いまはなかなか難しいですよね。

桜井そうですね。まあその中でゲームのファンになり、ゲームのファンであるからサントラをくり返し聞いて、頭の中に刷り込まれるということはぜんぜんあるんじゃないかな、とは思います。

野田当然ゲームクリエイターの中にも、なかなかゲーム音楽を覚えてもらえていない、印象が弱くなってきているということに気付いている方も、たくさんいるわけですよね。

桜井ただ、極端な話ですけど、ゲーム音楽は別に覚えなくても成立はしますからね。

野田ああ、確かに。

桜井そのときに受けた感情のほうが大事というふうに思えば。映画音楽なんかもそうですけど、あくまで雰囲気に合うことを第一前提にする。

野田そうか。そもそも覚えさせようとすること自体、ユーザー目線ではないのか。なるほどー。深ぇえええ! むじぃー!

桜井(笑)。

野田まだまだお話を聞きたいところですが、そろそろお時間ということで。桜井さん、本日はいかがでしたか。とりあえず今回、初めてお会いしてお話しをさせていただいたわけですが。

桜井そうですね。初めてお会いして音楽トークをするという、いわばムチャ振りでしたが(苦笑)、いろいろお話しができておもしろかったです。またやりたいですね。

野田またやりたいですよね。僕は桜井さんに聞きたいことがたくさんありますので、ぜひ次回もお願いします。今回の配信が好評だったら続けられるかもしれませんので、視聴した方は、SpotifyでふたりのMusic + Talkが配信されていることをぜひ広めてください。

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