市街で自動運転車を初体験「2回も事故りそうになった怖い」

ハンドル触らなくていい、レストランの直前予約もできるIoT×AIの完全自動運転車。かなり期待してたんですけど、2回もぶつかりそうになっちゃいました。

試乗したのはMicrosoft、NXP、IAV、Swiss Re、Esri、Cubic Telecomの6社が今月CESで共同出品していた車です。信号などの交通インフラと通信しながら市街を自動走行し、旅行者にAIが観光案内するというのがデモのコンセプト。

「タクシー運転手のおしゃべりも急ハンドルもないし、ストリップ(大通り)を車で流しながらAIが面白い店を次々紹介してくれて、その場で予定も組めるなんて最高じゃないか!」と思って早速トライしてみたのですけど、かなりビミョーな結果となりました。

乗ったのはこちら。自動運転技術フル装備の「Volkswagon Golf Estate」

自動運転は最近開発が急ピッチで進んでいるので期待しすぎてしまったのかも。Googleは何年も無事故で公道走らせていたし、Uberは昨年ピッツバーグで完全自動運転タクシー100台を投入しています。万一に備えて運転席に人は乗るけれど、後部座席に乗るのはガチのお客様って話ですからね。製造ではTeslaも完全自動運転技術を開発中です。今のクルーズコントロールに毛の生えたような運転支援を「オートパイロット(自動運転)」と呼ぶのは法的にアレなのでやめようよ、という声もありますけど、あれを一歩進めた完全自動運転、ですね。

市街で自動運転車を初体験「2回も事故りそうになった怖い」

自動運転5段階の定義。いま時代はレベル5に急激に進んでいる (c) 内閣官房IT総合戦略室・2016年12月7日発行

しかし今回のデモでは運転席のスタッフが慌ててブレーキを踏んで事なきを得る局面もありました。全走行時間の少なくとも40%は人力運転だったと思います。ハンドルを切るのもブレーキを踏むのも人。AIシステムに至っては人が操作しなくても起動するので、デモのためのデモみたいな印象でした。

レーダーで障害物を探知するはずのブレーキが効かない誤作動1回目。人がいて本当によかった…誤作動2回目

6社の名誉のために補足しておきますと…「ただのコンセプトカーですよ。完成後の雰囲気を掴んでもらうためのデモです」ときちんと試乗前に説明はありました。6カ月というタイトなスケジュールで組み立てたとは思えないぐらい、ちゃんと問題なく動いている部分もたくさんありましたけどね。

乗ったのは自動運転技術をガンガン投入した改造版の「Volkswagon Golf Estate」です。搭載したのは「V2X(路車間・車々間通信:vehicle-to-everything)」システム、レーダー、カメラ、LiDar、4G LTE通信技術などなど。どれも今の市販のTesla車なんかの最先端の運転支援システムより遥かに進んでいる技術ばかりなので、市街をスムーズに走行できる体力は十分あるんですね。

こちらは4G LTE通信システム用アンテナ

ただ実際にはインフラが未整備で、越えられないバリアがいくつか目につきました。まず信号。これは信号機にV2X通信システムの小さな箱(携帯ルーターみたいなやつ)を交差点に取り付けて、そこから流れる情報を車でキャッチするシステムなんですけれど、試乗ルートでこのV2X設営済みの交差点は1カ所だけ。しかも通信が確立していたかどうかも?な状態でした。助手席からは足でブレーキ押したかどうかまで見えないので何とも言えないんですが、その「自動運転」のパートでも間違いなく踏んでる気がしましたよ。

通信トラブルは車載のIoTでも感じました。車はMicrosoftのCortana搭載で、あたかもWindows 10対応パソコンのように車から最寄りのお店を検索したり、カレンダーにアポを入れたり、音声コマンドでタスクをこなせます。

ただひとつヘンだったのが、このCortana、勝手に起動するんですよ(下の動画参照)。確認したわけではないのですが、Cortanaのデモ用映像をただ流しているだけだと言われても驚かない感じでした。呼んでもいないのに起動するので。でも正直、これから買うクルマはAIアシスタント必須だよね、って思いました。

完全自動運転のレベル5までは道はるかという印象ですね、車も道も。LiDarもレーダーシステムも完璧には程遠いし、市街の通信システムはもっと遅れています。だけどあと10年も経てばきっと「運転者抜きでベガス回ってきました!」とみなさんに報告できるはず。希望は捨てていませんよ~。

image: Gizmodo

Michael Nunez - Gizmodo US[原文](satomi)