ASCII.jp 11acルーターがほしい! 教えて中の人!! Atermマニアックス

2014年1月に最新のWi-Fi規格「IEEE 802.11ac」(以下、11ac)が正式認定されてから、まもなく丸一年。大手キャリアから発売される最新スマートフォン・タブレットはすべて11acをサポートしており、さまざまなメーカーから11ac対応Wi-Fiルーターも数多く発売されている。ノートPCでも対応製品が普及しつつある状況だ。

急激に普及しているため、読者の皆さんの中には、手持ちのデバイスは11acに対応していても、親機のWi-Fiルーターが未対応だという人も多いのではないだろうか。それではせっかくの通信機能を活かせないのだが、11acルーターは製品が多くてどれを選べばいいのか分からないという方もいるはずだ。

そんな悩みを解消するために、今回はAtermシリーズでおなじみ、NECプラットフォームズ アクセスデバイス開発事業部の杉浦順一氏にWi-Fiの最新事情やルーターの選び方について伺った。これからWi-Fi環境を新しくしようと考えている方は、ぜひ参考にしていただきたい。

NECプラットフォームズ アクセスデバイス開発事業部 第2販売推進Gの杉浦順一氏

もはや定番、新規購入者の5割が11acルーターを選択

──最新のiPhone 6/6 PlusやiPad Air 2、そしてXperiaシリーズといったAndroid端末など、2014年に登場したスマホやタブレットでは標準機能として11acをサポートしています。それに合わせて、11ac対応のWi-Fiルーターを購入する人も増えてきているのでしょうか?

杉浦氏(以下、敬称略) Wi-Fiルーターの市場動向としては、ご存知のように以前は11n対応モデルが主流でしたが、最近では11ac対応モデルが11n対応モデルを上回り約5割を占める販売状況となっています。NECプラットフォームズとしては、今年度中には、11ac対応モデルが全体の6〜7割を占めるのではないかと見込んでいます。

Atermシリーズには、通信速度が速く多機能なハイスペックモデル「WG1800HP2」から、低価格なエントリー向けのモデル「WF800HP」まであるのですが、ネット利用に加えて動画を視聴するなどガッツリ使い込む方はハイスペックモデル、主にスマートフォンやタブレットだけで利用されるライトユーザーはエントリーモデルを選ばれることが多い印象があります。

写真左が「AtermWG1800HP2」で、写真右は「WF800HP」。「AtermWG1800HP2」は最大1300Mbpsの高速通信に対応したハイスペックモデルで、「WF800HP」はエントリー向け

スマホは「1×1」、タブレットやノートなら「2×2」、ガッツリ使い込み派は「3×3」がお勧め

──最新スマートフォンやタブレットのカタログでは、従来のWi-Fi機能の項目に、11acといった記載に加えて「2×2」や「HT80対応」などと書かれているのをよく目にするようになってきました。これはどんな意味なのでしょう?

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杉浦 まず「2×2」(ツーバイツー)とは、複数のアンテナを使ってデータを送受信する「MIMO」(マイモ)と呼ばれる高速化技術です。「2×2」の場合、親機(Wi-Fiルーター)側で2本、子機(スマートフォンやPC、USB子機など)側で2本のアンテナを使うことで、それぞれアンテナ1本の場合よりも高速にデータをやり取りできるようになります。

11acの規格としては最大8×8のMIMOに対応とされているのですが、現在の子機の状況を見ると、スマートフォンでは1×1、タブレットやPCでは2×2対応の製品がほとんどです。そのためNECプラットフォームズでは2×2をボリュームゾーンとして捉え、ラインナップを強化している状況です。

MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)は、複数のアンテナを使用してデータを同時伝送することにより無線通信を高速化させる技術。11acの規格では最大8×8となっており、一度に送受信できるデータ量が大幅にアップしている。この技術により、データ転送速度が一気に向上し、同時に障害物が多い環境でも安定して送受信できるようになった

「HT80」については、「チャネルボンディング」に関係する技術ですね。ごく簡単に例えると、これはデータを送受信するための道幅が広くなったものだと捉えてください。従来の11nでは40MHzの帯域幅(データ通信に使われる周波数の範囲)を利用していましたが、「HT80」では80MHz、つまりデータの通り道が従来の幅の2倍になります。ですので、そのぶん高速に通信できるというわけです。

チャネルボンディングとは、複数のチャネルを結合することで周波数幅を広げる技術だ。道路に置き換えると、11g/aでは1車線(20MHz)だったものが、11nでは、隣り合ったふたつのチャネルをあわせて2車線(40MHz)になった。11acでは、さらにチャネルを束ねて4車線(80MHz)が可能となり、11nより高速に通信できるようになった

ちなみに、11acの規格としては最大160MHz、つまり「HT160」まで規定されていますが、現時点ではまだ「HT160」対応ルーターは商品化されていません。

──「HT160」対応製品のリリースは、まだ先になりそうですか?

杉浦 そうですね……。ただ11acがこれだけ盛り上がっている状況ですので、「そう遠くない時期」に商品化したいと考えています。

──だいたい、いつごろですかね?(笑)

杉浦 できるだけ早い時期には実現したいですね(笑)。

──「4×4 MIMO」への対応はいかがでしょう?

杉浦 他社が先行して出していますので、それらを上回る製品をできるだけ早く出したいと思っています。

──現時点では、ユーザーはどのモデルを選べばいいですか?

杉浦 スマートフォンを主に使われる方なら1×1のエントリーモデル「AtermWF800HP」、タブレットやノートPC中心なら2×2のモデル「AtermWG1400HP」や「AtermWF1200HP」が適当だと思います。動画視聴などで大容量のデータ通信を必要とする予定なら、「AtermWG1800HP2」のようなハイスペックモデルがお勧めです。

現時点で3×3対応デバイスは多くはないのですが、「AtermWG1800HP2 イーサネットコンバータセット」を使えばAV機器などを含めた高速なネット環境の構築が可能になります。そういった製品をいち早く用意しておくことが、我々メーカーの使命だと考えています。4×4対応製品については、今後をご期待ください(笑)。